第3話 烈火の剣王

 赤い光が全てを包む。

 突如として翔の持つヴァリアブルコマンダーが光を発した。

 その光は暖かく、どこか人を落ち着かせるような光だった。

 そしてその光は現れた時と同じように唐突に消えていき、後にはヴァリアブルコマンダーを持ったままの翔と・・・・・・・・・

 3体の「勇者」が4体のロボットと対峙していた。

『な・・・・・・何だったんだ今の・・・?』

 沈黙を破ったのは3体の「勇者」のうち1体だ。彼らは皆8メートル近い人型のプロポーションを持ち、顔も人に酷似している。今喋ったのは細身の青い「ロボット」だった。

『さぁ・・・・自分には解らん。』

 黄色の「勇者」がそれに答える。両肩から天に伸びているドリルが特徴的だ。

『解らんってオイ・・・・・。』

『解らんものは解らんのだ!それよりも自分は・・・・・』

『マッハガンナー、グランガンナー、お喋りは終わりだ。来るぞっ!!』

 黄色の「勇者」が言い終わるより早く、大型のキャノン砲を持ったダークグリーンの「勇者」が呼びかける。2体が見れば、相手のロボットが武器を構えてこちらへと迫ってきていた。

『4体か・・・・一体余るな。残りはビッグの旦那に任せたぜ!』

 そう言うなり青い「勇者」―マッハガンナーが駆けていった。

『自分はあの素手の奴と戦います!ビッグガンナー、残りを頼むであります!』

 グランガンナーもダークグリーンのビッグガンナーに言い残し向かっていった。

『2体か・・・・・ったく、やれやれだ。』

 ビッグガンナーがぼやきながらも駆け出した。翔の命令も何も聞かずに・・・・・。




                         
                         
 どこからか、「声」が聞こえる。

―――・・・・・・・・・・・・・―――

(誰かが「私」を呼んでいる・・・?)

―――・・・・・・・・・・なさい―――

(何だ?今何と?)

―――・・・・・・・目覚めなさい―――

 慈愛に満ちた声が「彼」の心を満たす

(目覚める?何を言っているのだ?)

―――目覚めなさい・・・・。そして護ってください、この惑星(ほし)を・・・・―――

(あ、あなたは誰だ?そして何から護れと?)

―――あなたにしか出来ないことです。頼みましたよ・・・・―――

 だんだんと声が遠ざかる。

(待ってくれ!あなたは・・・・・)

―――私は・・・・・・―――

 その名は聞き取る事はできなかった。そして額に熱いものを感じて「彼」は目覚めた・・・・・・・。





『う・・・・・私は・・・?』

 「彼」が目を覚ます。どうやら気を失っていたようだ。不意に「足元」を見れば、そこには少年が立っていた。少年が小人に見えるような巨人、それはゼクサーだ。少年の名を口から紡ぐ。

『ツバサ・・・・?危ないから来るなと・・・』

 堪えきれなくなって少年―翔―が叫んだ。

「気がついたんだねゼクサー!!よかった〜・・・。」

『っ!そうだツバサ、敵は・・・敵はどうなったのだ?』

 そう言ってビルから身を起こすゼクサー。不思議な事に彼のボロボロになっていた身体は修復されていた。翔がその事を聞こうとするが、今はそんな事を言っている場合ではない。

『向こうでゼクサーの仲間と戦ってるよ!ゼクサーも助けにいって!』

 翔の指差した向こうで、確かに自分の見知った相手が戦っている。姿形こそ違えど、ゼクサーにはそれがわかった。

『あれはガンナーズか!?了解、ツバサ!』

 脚からゼクサーマグナムを抜いてそちらへと向かった。





                        
 最初に戦闘したのはマッハガンナーと「操機(アード)」、アーメイズだ。アーメイズがライフルを連射しながら驚異的な脚力で左右へと飛び退る。

 それを横っ飛びにかわしながらマッハガンナーも応戦した。前腕が開いて2丁のマグナムが出てくる。

『マッハリヴォルバー!!』

 高速で打ち出される弾丸がアーメイズを襲う。しかしこれを目にも止まらぬ速度で回避した。

『何っ!?』

 驚くマッハガンナーを尻目にライフルを連射、寸分の狂いも無くそれはヒットした。

『うわっ!』

 後退するマッハガンナー、当たった弾はどれも彼に大したダメージを与えてはいなかったものの、アーメイズのスピードと合わせて回避しがたいものとなっている。このままでは危険だ。撃ち返すもののやはりかわされてしまい、結局は反撃を受けてしまう。

『何か反撃の手段は無ぇのかっ!?』



 グランガンナーは、素手の操機オーファルと闘っていた。彼は馬鹿正直に、拳と拳での殴り合いをしていた。

 オーファルの右ストレートを紙一重でかわし、左の膝を叩き込む。体勢が崩れたところに右のアッパーを繰り出した。まともに受けてオーファルが仰け反る。止めとばかりに蹴りを出すが――

ガシッ!!

 最後の一撃はオーファルの腕に抱えられて不発となった。

『しまった!』

 そのままジャイアントスイングの要領でビルに投げつけられるグランガンナー。派手な音を立ててビルが倒壊した。崩壊したビルの残骸を頭から受けて、グランガンナーは動かなくなった・・・・・・。



 一方のビッグガンナーは2体を相手に防戦一方だ。遠距離からこちらを狙うガーネストに攻撃しようとすると、大剣を持つエメラディアに阻まれ、エメラディアを狙うと今度はガーネストの大砲が飛んでくる。4体の時ほどではないが完璧に近い2体のコンビネーションに手も足も出なかった。

『くそっ、やはり2対1では分が悪いか・・・・・!』

 悪態をつくビッグガンナー、その間にも敵の攻撃は続いている。そしてエメラディアの大剣を後に下がってかわしたその時――

『ぅおっ!!』

 先ほどまでの戦闘で発生した瓦礫に足をとられて転倒してしまう。だがそれが幸いしてかエメラディアも横のビルに剣を食い込ませてしまった。体勢を立て直そうとするがその時には大砲を構えたガーネストが照準を合わせている。仲間は来れそうに無い。覚悟を決めて脛のビームキャノンを構えたが、それは後から飛んできた一筋の閃光によって発射されることは無かった。

『な・・・・何っ!?』

 驚くビッグガンナー、振り向くとそこには「彼」がいた。

『ゼ・・・・ゼクサー!?』
 
そう、赤いボディの勇者、ゼクサーがそこに立っていた。

『お前・・・・その身体は?あんなにボロボロだったのによ・・・・』

『ボロボロなのはお前の方だろう?ビッグガンナー』

 そう言って苦笑しながらゼクサーはビッグガンナーを起こした。手に握られたゼクサーマグナムを一振りさせてゼクスラッシャーに変えて構える。

『積もる話は後だ。先に奴らを倒すぞ!!』

 ゼクサーが叫んだ。





                             
 ゼクサーの復活にはマッハガンナーとビッグガンナーの2体も気がついていた。

『ゼクサーの野郎、無事だったのか!?』

 喜びを露にしてマッハガンナーが言った。一方グランガンナーも

『ゼクサーの前で不甲斐ないマネはできんな・・・・!』

 ビルの瓦礫を押しのけて立ち上がる。そして再びオーファルと対峙した。

『これで・・・終わりにさせてもらう!』

 両腕のグランバスターを構えて放つ。片方2門、計4門のビームがオーファルに向かった。さらにそのままビームを追う様にして駆け出す。対するオーファルは、その両腕が光りだし、眼前に突き出すとそこに障壁が現れた。ビームがそれに当たり派手に爆発し、グランガンナーの攻撃は無駄に終わったかのように見えた。しかし―――

『オオオオオオオオオッ!!』

 爆煙の中からグランガンナーが飛び出した。両肩のドリルを高速回転させて障壁へとぶつける。ドリルはいともたやすく障壁を貫き、その中にいたオーファルの胴体に風穴を開けた。

『グランブレイクッ!!』

 その叫びでオーファルは爆発・四散した。

 そしてマッハガンナーも勝負を決めようとしていた。相変わらずアーメイズのスピードに翻弄されてはいるが、先ほどまでの焦りは消えている。

『あの野郎の脚を止めるのに何かねぇか・・・・?』

 マッハリヴォルバーを連射しながら辺りを見回す。すると――

『あった!アレだ!!』

 そう言って見つけたものに手を伸ばした。マッハガンナーが手にした物。それはビルの残骸の中にあった細長い鉄骨だった。

『アイツの着陸地点は・・・・・・」

 右目にターゲットサイトが降り、アーメイズの落下地点を予測する。元々は射撃性能を上げるためのものだが、こういった使い方も出来るのである。

『あそこかっ!!』

 見当をつけて鉄骨を横薙ぎに投げた。それは彼の見当どおりの方向へ飛んでいき、

ガツッ!!

 鈍い音がして、見事にアーメイズの脚を絡めとった。たまらず転倒するアーメイズ。鉄骨を除けて立ち上がるも、時は既に遅かった。

『くたばれ!このベナン野郎!!』

 そう言って両手のマッハリヴォルバーに実弾ではなく、彼自身のエネルギーを込めた。ちなみにベナンとは、他の星系に住むバッタの様な生物である。

『リヴォル・・・スマッシャーッ!!』

 途切れることなく無数の弾丸が吐き出される。それは体勢を整えようとしていたアーメイズの全身に1発も外れることなく命中した。
 そしてアーメイズは2度と動く事の無い金属の塊になった・・・・・。
 
『さて、残るはお前たちだけだぞ!』

 残った2機の操機に向かってゼクサーが言った。その時にはもうそれぞれの敵を倒し終えたマッハガンナーとグランガンナーも彼の周りに集まっていた。さすがに分が悪いと判断したのか、ガーネスト・オーファルは後退さる。さらに1歩、操機達が後退した直後、


―――上空に異変が発生した―――





                           
 マッハガンナーとグランガンナーが操機を倒した直後―――                

 急に空の一部が歪み始め、その中から一点の染みのような物が現れる。それは見る間に大きくなると人の形になった。長身痩躯で蒼い肌をした「男」だ。その「男」は宙に浮かんだまま下―――ゼクサー達と「操機」を見下ろしていた。その男の名はエイジス。操機達の主だ。   

 彼は苦虫を噛み潰した顔で下を睨んでいた。

「いつの間に数が増えやがった!?その上オーファルとアーメイズが殺られただと!?」

 彼とオルティアが立てた作戦では、相手はゼクサー1体のみだったのである。大きな誤算に彼は頭を抱えた。

「こりゃ作戦どころじゃねえな・・・・・。仕方ねぇ。こうなったら・・・・・・!」

  そう言って懐から召喚銭(サモン・チップ)を取り出す。今回取り出したのは蒼いチップだった。

「あいつらも相当ダメージ食らってるみてぇだから、アイツだけで大丈夫だろう。オルティアの野郎が力を貸してくれたみたいだからな・・・・。」

 召喚銭を天に向かって放り投げる。そして呼んだ。

「来い!操機・ラーヴィス!!

 これまで同様、空に暗雲が立ち込め、その中から操機が出てくる。しかし、その姿を見た途端、エイジスの目が驚愕に見開かれた。


『ん・・・・?な、何だありゃあ!?』

 最初に上空の異変に気づいたのはマッハガンナーだった。それにつられて他の仲間も空を見る。空からは丁度ラーヴィスが降りてくるところだった。その姿を見て誰かが言った。

『で・・・・・デカい・・・・・』

 そう、ラーヴィスは他の操機に比べ巨大な姿をしていた。大体、通常の操機の倍くらい・・・・・20m以上あるだろうか。鋭角的で重厚な鎧を着た騎士のような姿をしている。肩からは何本ものトゲを生やして、腰に曲刀をマウントしていた。それがゆっくりと降下してくる。

ズウウゥゥゥン・・・・・

 着地すると、その自重でアスファルトがめくれ上がった。

 
「オイオイ・・・・・あれがマジでラーヴィスだってのか!?オルティアの野郎、力を貸すってこういうことだったのか・・・。」

 上空ではエイジスがゼクサーたち同様に驚いていた。もともとラーヴィスは他の操機と同じ位のサイズだったのだ。それに装甲も今のものよりも貧弱だった。名前だけが同じで全くの別物、と言っても過言ではなかった。

 勝利を確信して彼は下の操機に呼びかけた

「コレならいけるぞ!よし、ガーネスト・エメラディア、お前らは戻れ!!ラーヴィス、エンリョはいらねえ。殺っちまえ!!」
 
 呼びかけた、と言っても彼の思念波だが、その命令を受けて2機の操機は空へと飛び上がった。

『あっ!あの2機が逃げるぞ!!どうする!?』

 飛び立った2機を見て、マッハガンナーが言った。

『放っておけ。それよりも今はコイツが優先だ!』

『ビッグガンナーの言うとおりだ。あれを止めなければこの星が破壊されるかもしれない!いくぞ!!』

 ゼクサーの言葉を受けて、全員が構えた。

 まず先手を仕掛けたのはビッグガンナーだった。相手に攻撃させる前に左肩に装備されたミサイルランチャーを発射した。

ドドドドドドッ!!

 計20発のミサイルがラーヴィスを襲う。それは狙い違わず命中―――したかに見えた。

『な・・・・何だと!?』

 驚くビッグガンナー。何とミサイルはラーヴィスの前で、時が止まったかのように静止したのだ。さらに驚く事にミサイルは全て方向を180度反転させてゼクサー達への方へと戻ってきた。辛くも皆ミサイルをかわし、今度はマッハガンナーがリヴォルスマッシャーを撃ちこむが、結果は同じだった。エネルギーの弾ですらラーヴィスの前では実弾同様跳ね返される。

『お・・・・オイオイ、マジかよ!?俺らの武器が通じてねぇぞ!どうする!?』
 
 焦るマッハガンナー。それをゼクサーが諌める。

『落ち着け!銃が通じないなら・・・・・・・・斬るのみだっ!!』
 
 そう言って天に向かって剣を振り上げた。その刀身が紅く染まる。

『ゼクスラッシャー・フレイムフィニッシュ!!!』
 
 そう叫ぶと刀身に燃え盛る炎が宿る。それを正眼に構えてゼクサーは地を滑走した。

 炎が刀身だけではなく全身を包み込む。最後には彼は炎の塊となった。

 一筋の炎の矢となったゼクサーがラーヴィスへと突っ込む。それは胴の真ん中を貫き、巨大操機を爆炎で葬る―――筈だった。

『な・・・・・!?』

 ゼクサーがラーヴィスを貫こうとした時、彼は見た。

 ラーヴィスの両肩のトゲが振動し、空間が歪む。そしてそこから不可視のフィールドが形成された。ゼクサーとフィールドがぶつかり合うと、落雷のような激しい衝撃音がし、ゼクサーは弾き飛ばされていた。

『うわああぁぁぁっ!!』

 弾かれた衝撃で100m以上吹き飛ばされる。アスファルトを削って止まった所には翔がいた。

「ゼクサー、しっかりして!!」

 ヴァリアブルコマンダーを通して彼の声が聞こえてくる。一瞬気を失っていたゼクサーが我に返った。

『く・・・・・ダメだ、今の私の力ではあれを打ち破ることは・・・・・・』

 うなだれるゼクサー。見ればガンナーズもラーヴィスの曲刀で吹き飛ばされていた。

『私に・・・・・・・私にもっと力が、皆を守る力があれば・・・・・!』

 ゼクサーが言ったその時、再び額が熱くなった。そしてあの「声」が聞こえた。

―――貴方の願い、聞き入れましょう―――

 その「声」は、今度は翔にも聞こえた。

「えっ!?今の声は誰?」

 戸惑う翔。しかし「声」は構わず続ける。

―――貴方の皆を守りたいというその願い、その気持ちに偽りはありませんね?―――

 今は声の主が何者なのか詮索している暇は無い。ゼクサー声を大にして答えた。

『もちろんだ!』

―――ならば私の力で貴方の秘められた力を開放しましょう。精神を額に集中して・・・・―――
 
 その声に従い意識を額のエナジークリスタルに集中する。するとクリスタルが輝きだし、それに呼応するように翔のヴァリアブルコマンダーが輝きだした。翔がパネルを見ると、そこには1つの言葉が英語で浮かんでいた。

「ば・・・・・ばん・・がーど、ふぁる・・・こん・・・?」
 
 たどたどしく翔がそれを読むと、ゼクサーに異変が起きた。

 額のクリスタルから突如として光が飛んだのだ。それは先程の自衛軍が放棄した兵器の1つ、爆撃大型戦闘機「はやぶさ」へと飛んでいった。今は撃墜され、羽や武器が無くなっていた。そして光が「はやぶさ」と融合する!

 光が辺りを覆い、それが晴れたとき「はやぶさ」はその姿を変えていた。撃墜された時に折れた羽は元通りになり、迷彩で塗られた外装は鮮やかな赤を基調とした色に塗り替えられていた。

―――これが今の貴方が開放する事のできる力の一部です。そして貴方の友人を、力を解放する為の「鍵」にしました。頼みましたよ。遠い星の勇者よ―――

 額の熱が引くと同時に「声」も消えた。後にはゼクサー達だけが佇んでいた。

「わかる・・・・・わかるよ。あの戦闘機の使い方が・・・・・!」

 ヴァリアブルコマンダーを握り締め、翔がゼクサーに言う。彼も力強く頷いた。

『よし、やろうツバサ!私の力、君に預ける!』

「うん!いくよ、ゼクサー!!」





                           
 翔がヴァリアブルコマンダーを胸の前に持ってくる。するとそれが展開、変形して剣状になった。そしてそれの切先をゼクサーに向け、開放の鍵となる言葉を唱えた。

「ブレイブ・エンター、烈空合体!!!

『おおおおおおおっ!!』


 ヴァリアブルコマンダーから光が伸び、ゼクサーのエナジークリスタルに吸い込まれる。彼がそれに呼応した。そして彼も召喚する。

『バンガードファルコンッ!!』

 ゼクサーが「はやぶさ」、否「バンガードファルコン」を呼ぶと、大型戦闘機が飛び上がり、ゼクサーの方へと向かってきた。それを見たゼクサーが今度はクリスタルから光を伸ばし、翔を彼の中にとりこんだ。そして向かって来ていたバンガードファルコンの背へと飛び乗り、さらに上空へと上昇した。ゼクサーの新たな力が、今目覚める!!

 バンガードファルコンの背に乗っていたゼクサーがジャンプして離れると、バンガードファルコン後部が後方へ180度回転し、それは脚部になる。
 
 機首が先端から左右にわかれ90度側面に回ってくる、その途中からさらに外側へ90度折れ曲がり、先端部は後を向く形となった。
 
 全体が垂直に起きると、胸にあたるプレートが下に降り、内部の空間へと落下してきたゼクサーが身体を変形させて収まる。
 
 プレートが元に戻ると、機首先端が回転、展開して拳が出てくる。頭部にある、がらんどうのヘルメットの中にゼクサーに似た人型のフェイスが現れた。
 
 フェイスを覆うようにマスクが装着され、両目に光が灯った。

『フォームアップ!!』

 胸の前で炎が収束し、その炎の殻を破るようにして鳥の頭部が現れる。その鳥が一声鳴く。背中のウィングが3分の2程から上下に別れ、X字状に展開した!

『烈空合体!ゼクシイイィィドッ!!!』

 ガッツポーズにも似た構えを取り、紅く巨大な戦士が――――吼えた。

 大地に紅き戦士が降り立つ。その雄々しい姿にそこにいた皆が圧倒された。上空にいるエイジスなどは、ゼクシードへの合体を目の当たりにしたショックで暫く動けなかった程だ。はっと我に帰り、エイジスはラーヴィスに向かって命令した。

「こ・・・・・こけおどしだ!構うなラーヴィス、やっちまえ!」

 エイジスの命により、ラーヴィスが構える。対するゼクシードは自然体で立ったままだった。それに向かってラーヴィスは剣を振り被った。間合が離れているにもかかわらず、一気に袈裟切りに振りぬく。すると振りぬかれた曲刀から見えない「刃」が飛んだ。それは真直ぐゼクシードへと向かい、直撃する。

ドコオォォォン!!

 「刃」はゼクシードに当たると大爆発を起こした。たて続けに曲刀を振り、多数の「刃」がゼクシードに降り注ぐ。爆発は新たなる爆発を生み、爆煙でゼクシードの姿はかき消された。

「やったか!?」

―――上空でエイジスが指を鳴らす。しかし煙がはれた瞬間、彼の目は信じられないものを見ることとなる―――

「ば・・・・・・・・馬鹿な!?」

 エイジスが見たもの、それは地に降り立った時のままの姿でいるゼクシードの姿だった。無論無傷である。ゼクシードが初めてその口を開いた。

『何だ。お前の力は・・・・・・その程度か?』

 先程までとはうって変わって、自身に満ち溢れていた。

『今度は・・・・こちらから行かせてもらう!!』

 そう叫ぶとゼクシードの胸の鳥が口を開き、そこから火炎が迸る!

『バーストッ、ブラスター!!』

 胸から炎が噴き出し、それはラーヴィスを包み込んだ。あまりの高熱に周囲の倒壊したビルの鉄骨が歪むほどあった。しかしそれだけの熱量を受けた中、動く物があった。

『やはりか・・・・・・』

 ゼクシードが言う。ラーヴィスの前に、先程ゼクスラッシャーやミサイルを防いだフィールドが展開されていたのだ。それを見てゼクシードは確信した。

『あの肩の角で空間を歪ませてフィールドを張っている。・・・空間跳躍(リープ・ジャンプ)の応用か。先程の刃も空気を圧縮して飛ばしていたようだな・・・・。』

 一定範囲の空間を歪ませ、目的地と現在地を直結させるワープ航法の1つ、空間跳躍。ラーヴィスのフィールドはその原理を応用したものだったのだ。空間を歪ませ、一時的に今の空間との位相をずらす。それにより全ての攻撃を無効化することができるのだ。実際先程のミサイルも、跳ね返したのではなく位相をずらすことでループさせたのである。そのままフィールドを展開しながらラーヴィスが迫ってきた。

『あの角さえ斬れば・・・!』

 身構えるゼクシード。そこに翔の声が聞こえてきた。

《剣を抜いてゼクサー!いくよ!!》

『了解!ツインキャリバーッ!!』

 そう言うと両腕側面のカバーが開き、そこから伸びる棒状のもの――剣の柄を抜くと、柄から光が伸び2振りの片刃の長剣になった。その剣でラーヴィスの斬撃を受け止める。2合、3合と受け止め、流しているうちにゼクシードはあることに気づいた。

『ム!?攻撃の時はフィールドを消さないといけないのか!』

 そう、流石の防護フィールドも攻撃の時は消さなければいけなかったのだ。それに気づいた時、ちょうど剣を叩きつけてきたラーヴィスに一瞬の隙が生まれた。ゼクシードにとってはそれで充分だった。

『今だ!はぁっ!!』

 気合一閃、ゼクシードの両腕が閃くと、次の瞬間にはラーヴィスの肩が平らになっていた。1本残らず全て斬ったのである。さらに驚くべき事に、ラーヴィスの曲刀まで中程から両断していた。その反動で仰け反るラーヴィス。だめ押しとばかりにゼクシードから放たれたキックがラーヴィスを吹き飛ばした。

《今だよゼクサー!!》

 翔がゼクシードに言う。その合図を受けてゼクシードがツインキャリバーの柄頭を合わせ、身体の前で高速回転させると、その回転に合わせる様にして炎の環(わ)が出来上がる。その炎のみをラーヴィスに向かって投じた。

『サークリングヒイィィト!!』

 炎の環はラーヴィスを包むと爆発を起こし、空へと舞い上げた。しかもサークリングヒートで作りあげた結界のようなもので磔にされ、身動きが取れなくなっている。ゼクシードが剣の峰の部分をあわせ、上に掲げた。すると2本の剣が1つになる!

『エクステンド・ザンバアァァッ!!』

 一振りの巨大な剣となったエクステンド・ザンバーを抱え、ゼクシードがスラスターを全開にして突撃する。そのスピードを維持したままジャンプした。剣を大上段に振りかぶると刀身を紅蓮の炎が包み込む!

『ヴォルカニック・エンドッ!!!』

 頭頂から股間まで一刀両断にする。地面に着地した時、刀身を包んでいた炎は既にラーヴィスの体内にあった。外と内、両面から膨れ上がった炎はラーヴィスを包み込み―――

ドゴオオォォォォン!!

 巨大操機を跡形も無く爆砕した。剣を2つに戻し、脚に収納する。

『ミッション・オーバー。』

 ゼクシードがそう言うと、胸の鳥が一声鳴いた。






 荒廃した街に真紅のロボットがそびえ立つ。それを眼下に見下ろしながらエイジスは言った。

「ま・・・・・まさかラーヴィスがやられるとは・・・・・。しかも何なんだあの合体はよ・・・・。」

 そしてエイジスは虚空へと姿を消した。自分にしか聞こえない声で一言のこして―――

「こりゃあ・・・・・あのお方に報告する必要がある、か。くそっ!」



《街が・・・街がメチャクチャだよ・・・・・。》

 ゼクシードの中で翔が言った。確かに建物は崩れ、アスファルトはめくれ上がり辺り一帯には凄惨な光景が広がっていた。恐らく戦闘に巻き込まれて命を落とした者の数も100や200ではきかないだろう。しかし絶望する翔へゼクシードが言う。

『大丈夫だツバサ。私に任せてくれ。』

 そう言って上空へと飛び上がる。額のエナジークリスタルが明滅していた。

『リザレクションフィールド!!』

 エナジークリスタルから街に向かって光が降り注ぐ。すると奇跡が起きた。街が元に戻っていくのだ。ビデオを巻き戻すかのように崩れた建物は元どおりになり、死んだ筈の人々までが元に戻っていた。人々はみな一様に目を丸くしていた。

「な・・・・何をしたの!?」

 翔が驚いていると、ゼクシードが説明した。

『今のは「リザレクションフィールド」、というらしい。急に額から浮かび上がった言葉だったんだが・・・・こうなるとは思わなかった。
どうやら空間に干渉して元の姿に戻すらしいが・・・・詳しい事は私にもわからない。』

「わからないって・・・・・・・やっぱりさっきの『声』が関係してるのかな?」

『おそらくは、な・・・。』
 


 しばらくすると、再び報道の関係者達が神楽ヶ丘市内に集まったが、その時にはゼクシードを始め勇者達の姿は消えていた。





                          
 この世界のどこともつかぬ異空間にある「城」。今そこの玉座には3人の人影があった。1人はエイジスだ。他の2人のうち1人は女性―――レザードで、残る1人はオルティアだ。彼らは今、玉座にある不気味な像に向かって跪いていた。不意に、その像の目が発光し、声が響き渡った。

『・・・・・・・ではエイジスよ、目的は果たせなかったのだな?』

 臓腑を震わせるような声が響いた。その一言でエイジスがさらに深くうなだれる。

「も・・・・・申し訳ありません!!つ、次こそ必ずや・・・!」

 そこにレザードが嘲笑をあびせる。

「フン!2度も失敗しといてよく言うよ!次はアタシが出るからアンタは少しおとなしくしてな!」

「な・・・何だとテメー!!」

 オルティアが叱責した。

「やめんか2人とも!主の御前だぞ!」

 その言葉でエイジスとレザードがはっとする。

《し・・・・失礼しました!》

 慌てて居住まいを正すエイジスとレザード。そこに「主」と呼ばれた存在が言った。

『まぁよい。してエイジスよ。貴様に今1度、汚名返上の機会を与えようではないか。』

「ほ・・・・本当ですか!?」

 俯いていたエイジスの顔が跳ね上がる。

『だが次は無いと思え。その時は・・・・・解っておろうな?』

「は・・・・・ははっ!」

 平伏するエイジス。その次に出るであろう言葉を、オルティアが紡いだ。

「この銀河に新たなる秩序を・・・・!」

「我らが主、グランドライゼス様の名の下に・・・!」


―――部屋中にグランドライゼスと呼ばれたものの哄笑が響き渡った―――





                         
 一方、戦闘を終えたゼクサー達は、弦十朗の研究所へ戻っていた。ガンナーズも一緒だ。彼らの傷も、ゼクシードの「リザレクションフィールド」によって修復されていた。基地にたどり着くなり待っていたのは、ねぎらいの言葉・・・・・ではなく、麗佳の叱責だった。
それも翔に向けての。

「翔君!何であんなムチャしたのよ!」

かみつかんばかりに近寄る麗佳。足はすっかりいいらしい。纏に押えられてる麗佳に、たじろぎながら翔が答えた。

「だ・・・・だって、仕方ないじゃないか。ゼクサーと僕にしか出来ない事なんだから・・・・。」

 その台詞は麗佳の叫びによって最後まで言う事が出来なかった。
「だっても何も無いわよ!翔君に何かあったら・・・・・私、私・・・!」
 
 翔は見た。普段決して自分に対して見せる事の無かった麗佳の涙を。そこへ弦十郎が割って入った。
「麗佳君、そのくらいにしておきなさい。翔君は彼なりに精一杯の事をしようとしたんじゃからの。」

「でも・・・・・でも何で翔君ばっかり・・・・。」

『すまないレイカ・・・・。私の責任だ。私が翔をこの戦いに巻き込んでしまった・・・・』

 ゼクサーを睨みつける麗佳。その目には明らかに嫌悪の眼差しが含まれていた。

「そうよ・・・・!あんたたちさえ来なければ・・・何で地球に来たのよ!戦争がしたいなら他の星でやればいいじゃない!」

「麗佳ちゃん!!」

 思わず翔が声を荒げる。ビクッっと身を震わせ麗佳が翔を見た。その2人のやりとりをずっと見ていたビッグガンナーが、ゼクサーに小声で耳打ちした。

『おいゼクサー、「あのこと」はまだ彼らに話していないのか?』

『ああ・・・。本当は巻き込みたくなかったので黙っていたが、そうもいかなくなったな・・・・・。』

 そう言ってゼクサーは翔達を見た。彼と麗佳はまだ言い合っている。それを遮るようにしてゼクサーが言った。

『レイカ、君の言うとおりだ。奴らがこの星に来た目的について話そう。』

 え?と面食らったように麗佳が見上げる。私達には教えられないのではないのか、と纏が聞くと、マッハガンナーが答えた。

『仕方ねーだろ。こうでもしなきゃ今度は俺らが侵略者だ。』

 そう言って苦笑するマッハガンナー。ゼクサーがそれに続けた。

『前に私が宇宙に存在する犯罪組織が結託している、と言ったのは覚えているか?』

「うん・・・・。ゼクサー達が追ってきたのもその中の1つなんでしょ?」

 翔が答える。しかしその答えにゼクサーは首を縦に振らなかった。

『以前はそう言ったが、私達が追っているのは実は結託している組織の1部などではないのだ。』

「な・・・何ですって!?」

 この一言にその場に居た者は驚いた。構わずゼクサーは続ける。

『私達が追っている組織・・・・・・それは今回の騒動の中核組織なのだ。奴らは何の目的か知らないが、各銀河がもつ神秘の力を集めている。』

「神秘の・・・力?」

『ああ。我々は「コスモエナジー」と呼んでいる。コスモエナジーはその名の通り、銀河の持つエネルギーだ。大半の銀河ではその力は太陽を始め各惑星にまんべんなく分けられるのだが、この太陽系は違った。エネルギーを持っているのは、太陽・木星そして・・・・・・地球の3つの星だけだ。』

「それってつまり・・・・・・」

『そう。エナジーを持っているのがこの3つと言う事は、すなわち1つの惑星が持つエネルギーの量が尋常ではないと言う事だ。地球は太陽に次ぐエナジーの量だ。そんなのを開放された日には、この星が塵1つ残さず消滅してしまう。』

「そんな!」

 麗佳が悲痛な声をあげる。そして翔が言う。

「本当はゼクサー達がこの星へ来たのは偶然なんだ。その敵と宇宙で戦っていたらリープ・・・何とかで飛ばされたんだって・・・・・麗佳ちゃん。もし、ゼクサー達が地球に来なかったら、今ごろ僕達死んでたのかもしれないんだよ?」

 その一言に麗佳の顔が歪む。再びその相貌から涙がこぼれ落ちた。

「私・・・ううん、私達そんなの知らなかった・・・・・。なのに酷いこと言っちゃって・・・・・・ごめんなさいっ!!」

 嗚咽交じりに麗佳が謝る。それを見たゼクサー達は彼女の涙に困惑しながらも安心したようだ。一同を代表してか、ビッグガンナーが彼女と、そして皆に言った。

『わかってもらえて何よりだ。・・・・・我々に、協力してもらえるかな?』

 大きく頷く翔、涙をぬぐいながら何度も首を縦に振る麗佳、溜息混じりに苦笑する纏、笑顔のまま黙する弦十郎。




・・・・・その後しばしの間、研究所に笑い声が溢れていた・・・・・。     




次回予告へ


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                        あとがき

 作者(以下作):お待たせ(?)しましたぁっ!ゼクシード第3話「烈火の剣王」いかがでしたか?

 麗佳(以下麗):いかがでしたか?じゃないわよっ!

 作:おぅっ!?出たな大凶女!(注1)

 麗:うっさいわね!私はそんなの信じないんだから!それよりも今回は随分遅れたわね?

 作:うむ・・・。実は今回、途中でパソコンがイカレてしまったのよ・・・。んでちょっと中断してた。

 麗:で、今は大丈夫なのよね?

 作:うんにゃ、まだ調子悪いぞ。でもやったらできたのでこのまま一気に書き上げてしまおう、とね。中断してたおかげかもしれないが、
   俺的に気に入ったものになったかな。

 麗:一応、こんなのでも見てくれてる人はいるんだから、ちゃんとしなさいよね。

 作:一応、ってのが引っかかるが、おう!頑張るぞ!

 麗:で、次回の見所は?
 
 作:ヒ・ミ・ツ♪
 
 麗:ちょっと・・・・!(拳を握る)

 作:嘘嘘嘘!そのメリケンをしまえぃっ!

 麗:・・・・・ちっ

 作:「ちっ」ってオイ・・・・。それはともかく次回はガンナーズと麗佳!お前さんが主役だぞ!

 麗:えっ!?わ、私が主役?

 作:これで「影の薄いヒロイン」と言われなくてもすむぞっ!

 麗:ソレはアンタが勝手に言ってるんでしょっ!でも私が主役なら・・・・・・ホラ!さっさと書き上げなさい!!

 作:判った、判ったからその手に持ったグロッグしまえって!!

 麗:遅くなったけどあけましておめでとう!今年もゼクシードをよろしくね♪

 作:あっ!それ俺のセリフ!

                                
                          
                 注1:ネットで流行り(?)の「ハンドルネーム占い」の結果。麗佳で占ったら大凶だった。

                              2002年1月   動輪(占いは小吉)&羽賀 麗佳